私は北海道大学の教育学部出身です。
発達心理学研究室に所属し、その名の通り、発達心理学を研究していました。
もともとは大学院への進学を希望するほど発達心理学が好きで、その魅力に取り憑かれていました。
そんな大学での研究について今日は少しだけお話させてください。

Index

• 01.心理学とは
• 02.発達心理学とは
• 03.世の中にある発達心理学の不思議
• 04.思春期を研究の対象段階とする

01.心理学とは

心理学と聞くと、某メンタリストの方の影響で「他者の心を読む学問」と勘違いされている方が多くいらっしゃいます。

実際の心理学というのは皆さんが思っているよりかなり理系よりの学問体系であり、「統計学」に近い領域と言っても良いと思います。当然、他者の心なんて全く読めません。

すごくざっくり説明すると「アンケート調査」が心理学をイメージする入り口として分かりやすいかもしれません。

たくさんアンケート調査を行えば、質問内容に対して「傾向」が掴めてきますよね。
これが心理学の土台となる考え方です。

ただし、一口に心理学と言っても実際には細かい分類があり、その分類によって考え方も研究アプローチも大きく異なります。

私は主専攻の発達心理学の他、臨床心理学についてもゼミに所属し研究していたので多少の知識はありあますが、これら以外の他分類の心理学については素人同然です。

ですので、今回は主専攻の「発達心理学」に的を絞ってお話できればと思います。

02.発達心理学とは

では発達心理学とはなんでしょうか。
そもそも「発達」とはなんだと思いますか？

なんか改めて聞かれると難しいですよね。
実際にこれは大学の講義の最初に教授から投げかけられた質問でもあります。

この問いに近い概念として「成長」をあげる人が多いです。
しかしこれは非常に惜しい間違いです。

「成長」とはできなかったことができるようになること。
例えば、子どもが初めて自転車に乗れるようになった。
これは紛れもない「成長」です。

しかし、「発達」は少し違います。

例えば５歳の私はスキーを滑れていた。
しかし、本州へ引っ越し、10年後北海道に戻るとスキーが滑れなくなっていたのです。

「できなかったことができるようになる」に加えて「できていたことができなくなる」
これが「発達」です。

「成長」を仮に１方向のベクトルと捉えるのであれば「発達」は双方のベクトルということです。
人間の「発達」には負の側面が在るのです。

発達心理学では「発達段階」として成長過程で区分を行い、その段階に応じたアプローチを行う。

03.世の中にある発達心理学の不思議

あなたは「7歳以下の子どもが自殺した」というニュースを見たことがありますか？

ないはずです。
ただニュースにならないだけでしょうか。
それも違います。

幼児期の子どもは自殺しないんじゃない。
“自殺できない”のだとしたらどうでしょうか。(詳しくは後編で)


あなたは「グレてるチンパンジー」を見たことがありますか？
これも聞いたことがないはずです。でもよく考えてみてください。

人間のルーツは猿にみる説が主流です。
生物学では生物は変化する環境への適応のため、進化するものとされています。人類も同様に進化を重ねてきた生物であるはずです。

あまりに有名なエリクソンの心理社会的発達理論では人間の発達段階は８つに区分されます。
各発達段階(とりわけ前期)における行動は現代のヒト科動物にも酷似するものがあることが分かっています。


ここで私が注目したのは「思春期」という段階は人間特有のものであるということです。
チンパンジーがグレないのは「思春期」という発達段階がそもそも存在していないからではないか？
と考えられるわけです。

だとすれば、人類は進化の過程で「思春期」を獲得したことになります。
いや、「獲得してしまった」とも言えるかもしれません。

04.思春期を研究の対象段階とする

ヒトを除く霊長類に存在しない「思春期」は何故かヒトにだけ備わっている。
つまり、思春期は進化の過程で獲得したものだということになります。

しかし思春期には謎が多い。
精神状態は非常に不安定であり、統計的に見ても自殺割合・自傷割合が高い。
傷つきやすく、周りの目もどういうわけか気になってしまう。

こんな危険で非効率的なものを何故人類は進化の過程で獲得する必要があったのか。
そこに迫るのが私の研究の入り口だった。