中学校で授業を担当させていただきました!
この度ご縁をいただき、札幌市内の中学校2校でキャリア教育の授業を担当させていただきました。
Index
01.キャリア教育とは?
皆さんは「キャリア教育」を知っていますか?
現在の学校というのは一昔前とはいろいろなことが変わっています。
とりわけ昔から問題視されてきた「学校と社会の分断」は改善されつつあり、学生のうちから働くことについて考える「キャリア教育」が教育現場において重視されるようになりつつあります。
今回はそんなキャリア教育の一環として、実際に働く大人をゲストスピーカーとして招き、学生と対話するという内容の授業でした。
02.大人でも頭を抱えた超高難度な授業内容
私はデザイナー/エンジニア/カメラマンと大まかに分けて3つの顔をもっておりますが、全てを語ってしまうと時間内に収めることができないため、今回の授業には「デザイナー」として参加させていただきました。
ところで皆さんはデザイナーと聞くとどのようなイメージをもちますか?
・特別な才能をもって生まれた人でしょうか?
・絵が上手いイメージでしょうか?
・女性が多い職業でしょうか?
せっかくの機会なので、そんな皆さんがイメージしがちな誤解を紐解くことを授業テーマに据えました。
そんな私は授業冒頭からいきなり超難解な課題を出します。
全く予期しない意味不明な課題に学生さんも戸惑った様子でした。
周囲の先生方も腕を組んで考え込んでしまうほど難しい課題です。
必ず見たことがあるはずなのに、いざ描けと言われると大人でも難しい作業です。
皆さんも是非、頭の中で思い描いてみてください!
検索すれば大抵の答えが得られる現代。
記憶だけを頼りにデザインを思い出す鬼畜課題出すが、学生の皆さんは非常に精力的に向き合ってくださいました!
03.戦争が生んだデザイン
さて、そんな超難問の答え合わせでは「ああ〜」と大歓声が!
答えをみると「ああ〜」という感じですよね。よくわかります。笑
では、ここでもう一段踏み込んで、「そもそもなんでこのデザインなんだ?」を紐解き、授業の本懐に迫ってゆきます。
5円玉には実は大きく分けて3つのものが描かれており、実はそれぞれ産業を表しています。
ぶっちゃけ知らなかった方も多いと思います。
では、なぜ産業を描く必要があったのでしょうか?
その答えは歴史にあります。
皆さんはこのような背景を知っていましたか?
歳をとったからなのかはわかりませんが、10代の頃全く興味がなかった歴史は知れば知るほど味わい深く、面白いなと痛感することばかりです。
私は「デザインとは、人々の願いを目に見える形にすること」であると定義しました。
そしてその願いは表に顕在化しているとは限らず、依頼者本人でさえ、自分自身の願いを認識できていないことすらある。
デザイナーはその願いをまずは明確に引き出すところからやっていく仕事なんだと語らせていただきました。
そこに絵の上手い下手は関係ないし、特別な才能もいらない。
本当に自分で再現できないようなことは、いわゆる「特別な才をもつ人」に任せればいい。
手を動かす前にもっと大切なことをどこまでしっかり考えられるかが、プロのデザイナーだと私は思っています。
そしてその「考えること」は中高等教育に詰まっている。
もっと言うならば、「考えることの練習の場」のようなイメージ。
だから、「考えることを放棄するな」と学生の皆さんに伝えさせていただきました。
04.全人類デザイナー
授業の最後には私がいつも口にしている「全人類デザイナー化計画」のお話もさせていただきました。
デザイナーに特別な才能は不必要とお話させていただきましたが、実は私は人類みなデザイナーだと思っています。
デザインに興味が全くない人なんていないと思うんです。
・部活動でのポジションや陣形 → 勝利のためデザイン
・先生 → 生徒の未来をデザイン
・医者 → 患者の生活をデザイン
というようにデザインは万物の根幹に必ず存在していると思っています。
もっと言うのであれば、みんな誰しもデザインをしたことがあるはずなんです。
小さい頃に夢中になった折り紙。
日が暮れるまでつくった秘密基地。
学校に掲載されたポスター。
でも、大人になるにつれて良くも悪くも「空気が読めるようになってしまう」。
ルールやしがらみが増える中で、クリエイティブに蓋をしてしまうんです。
私の中では振り返ればそれが小学校高学年〜中学生の出来事だった。
だからこそ、今回中学生の皆さんには、
「どうか自分のクリエイティブに蓋をするようなことはしないでほしい。あなたがどんな職に将来ついたとしても、あなたがなにかのデザイナーであることは忘れないでほしい。」
とお伝えさせていただきました。
05.未来のデザイン
私の授業はこれで終わりではなく、皆さんに課題を出させていただきました。
それは「未来の5円玉をデザインする」というこれまた非常に難しい課題です。
これに関しては答えがないので、私の方で思考のヒントを事前に準備しました。
これは私自身仕事でよく実践している思考をベースにしています。
デザインを生業にしていると、前がどちらかすらわからない迷宮に入ってしまうことはよくあります。
ただ、そんな時こそ冷静に太陽の位置や風向きなど今ある情報を整理してテーブルの上に並べてロジカルに考えることが重要だったりします。攻略できない迷宮などないのです。
そんな思考の面白さにも気づいてもらえると嬉しいなという意図も背景にはあります。
後日、生徒の皆さんから実際にデザインされた未来の5円玉がシェアされました。
本当は全てを掲載したいのですが、容量の関係で一部抜粋です。
私はこのデザインを見たときに本当に感動しました。
こちらが想定していたよりも課題に対して遥かに真摯に向き合ってくださったのが、成果物を見てすぐに伝わってきました。
どのデザインも素晴らしく、私自身もハッとさせられました。
時間の関係上、学生さん全員と直接会話はできませんでしたが、「どうしてこういうデザインにしたの?」という問いに対し、皆さんが堂々と答える姿が非常に印象的で、私自身にとっても貴重な学びの場となりました。
06.おわりに
私はもともと教育に高い関心がありました。
大学では心理学を研究していましたが、学部は教育学部です。
教員免許は取得しませんでしたが、教職課程も履修していました。
そんな私が社会人になって改めて教育現場に実際に足を運んで感じたのは「自分たちが学んでいた頃と教育現場は変化している」ということです。
学生の皆さんは1人1台のノートPCを持って授業を受けていますし、授業の内容も従来の詰め込み教育とは異なり、思考力を醸成するような内容になっていました。
自分が大学生時代に議論・研究していた未来にこの数年で近づいていることに率直に驚きましたし、嬉しかったです。
学生さんとの交流でも学びが多く、ドキッとしてしまうような質問や「改めて考えてみるとどうだったけ…」とこちらが考え込んでしまうような鋭くも純粋な質問は自身のキャリアや今後の事業展開を再考する契機にもなりました。
普通に生活をしていて、大人になってから学校に訪れる機会はまずありません。
この貴重な経験をしっかりと自身のフィールドに持ち帰り、さらに成長していければと思います。
ありがとうございました。
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この記事を書いた人
Shun Otsuka
大塚 舜
北海道札幌市を拠点とするフリーのクリエイター。
千葉県で生まれ、関東・関西と全国を転々とし、現在は北海道札幌市を中心に活動中。
北海道大学卒業。
大学では心理学を研究していたが、人の心は読めない。大学卒業後、不動産会社に3年間従事し、2022年EVとして独立開業。
デザイナー・エンジニア・カメラマンの3役を兼務し、大手企業から個人まで多種多様な業種のクリエイティブサポートを行う。
好きなものはお風呂。苦手なものは高いところ。
素直で真面目。今年頑張りたいことは早めの確定申告と自炊。
自称、褒められて伸びるタイプ。